東亞合成研究年報15号

2012年1月1日発行

論文

細胞膜透過性ペプチドとしてのリムキナーゼ2核小体移行性シグナル

リムキナーゼ2(LIMK2)は、LIMドメインを内在するプロテインキナーゼである。LIMK2は、アクチン脱重合因子であるコフィリンをリン酸化することでアクチン重合を制御する機能を有する。また、LIMK2には、内皮細胞において、細胞質と核小体の間を移行するという特性がある。LIMK2に内在する13アミノ酸鎖長の塩基性アミノ酸に富む領域は、核小体移行性シグナル(NoLS)として、細胞質から核、及び核小体への移行において重要な役割を担っていることが報告されている。我々は、新しい細胞膜透過性ペプチド(CPPs)の探索を目的に、LIMK2のNoLSに着目した。CPPsは、タンパク質や核酸、ナノ分子等を細胞外から細胞内へ輸送する働きを有する機能性ペプチドである。LIMK2 NoLSに、神経分化に関与することで知られるVHLタンパク質由来のBC-boxモチーフペプチドや緑色蛍光タンパク質(GFP)を結合し、それらの細胞膜透過機能を評価した。その結果、LIMK2 NoLSは、細胞の種類や付加する生理活性物質の分子量の大きさに関わらず非常に優れた細胞膜透過機能を有するとともに、血液脳関門(BBB)を透過する特殊な機能を有することを見出した。本研究では、CPPとしてのLIMK2 NoLSの報告を通して、NoLSをベースとした新しいCPPsを提案する。

DBTTCを用いたBAのミニエマルション重合による高分子量体の合成

ジベンジルトリチオカーボネート(DBTTC)を用いて、アクリル酸ブチル(BA)の可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合によるミニエマルション重合を行った。低い目標重合度では重合制御されたものの、高い目標重合度では、新たな核生成により、新粒子の生成、および、制御されない高分子量体が観察された。新たな核生成を抑制するためには、界面活性剤の添加量を減らすことが最も効果的であった。低い界面活性剤添加量でミニエマルション重合を行うことにより、比較的狭い分子量分布を有する(Mw/Mn=1.45)、高分子量のPBA(Mn~170,770)を得ることができた。

新製品紹介

防虫加工剤「ナインセクト MC-150」

忌避剤とは、害虫や有害動物を寄せつけにくくさせる作用をもつ薬剤のことである。例えば虫よけスプレーは液状の有機系忌避剤を使用しているが、この成分は揮発することで飛来する蚊の嗅覚に作用し、忌避効果を発現する。このような特徴をもつ有機系忌避剤は、よく揮発するほど効果も高くなると期待できる一方で、すぐになくなるため持続性が低いというトレードオフの特徴をもつ。また、忌避剤を樹脂に練り込み加工したい場合、沸点の低い有機系忌避剤は加熱工程で発泡や揮発によるロスが生じるため不向きである。そこで、当研究所でこれまでに培われてきた有機/無機ハイブリッド化技術を活かし、忌避効果の持続性と樹脂加工に十分な耐熱性を兼ね備えた防虫加工剤「ナインセクトMC-150」を開発した。

光硬化型粘接着フィルム UVPシリーズ

粘着剤は、指圧程度の圧力で瞬時に接着が可能なことから、電子機器、自動車部品、建築材料など幅広い分野で利用されている。その中でも、携帯電話やTV、パソコンなどの主要部品であるフラットパネルディスプレイ(FPD)は、偏光板、輝度向上フィルム、カラーフィルター、タッチパネルなど、さまざまな機能を有する部材の集積体であり、多くの部位で粘着剤が用いられている1)。FPD用部材は光学特性や信頼性などの要求レベルが高く、かつ技術の変遷により新たな要求が加わることも多いため、それらに用いられる粘着剤も絶え間なく技術開発が続けられている。本稿では、従来の粘着剤にはない機能を有する光硬化型粘接着剤を取り上げ、従来の粘着剤や接着剤との違いについて述べた後、近年注目度の高い段差充填用樹脂への応用可能性について説明する。

改修用・アクリルゴム・外壁塗膜防水工法「アロンウオール®NEO」

1997年に開催された気候変動枠組条約第3回締結国会議(COP3,京都会議)では、地球温暖化対策として、温室効果ガスの削減目標が制定された。これを受け、(社)日本建築学会では、日本の二酸化炭素総排出量の4割を占める建築物に対する削減策の一つとして、「建物の耐用年数を3倍に延長することが必要不可欠である」との声明を発表した1)。日本における建物の寿命は、30~40年程度と言われており、欧米の1/2~1/3と短く、これまでの老朽化した建物を壊して新しく建て替える(スクラップアンドビルド)「フロー」から建物を長持ちさせて長く使い続ける「ストック」への転換、すなわち「建物の長寿命化」への取組みが急務となった。一方、構造を担う部材であるコンクリート、鉄および木材、更に、屋根や外壁を構成する部材である軽量気泡コンクリート(ALC)パネル、プレキャストコンクリート(PCa)部材、押出成形セメント板などの劣化は、水分との接触により発生・進行する2)。特に、すべての建物に使用されている鉄筋コンクリートは、表1に示すように、劣化のすべてに水分が関与しており、多雨な日本における建物の長寿命化は、水分の遮断がキーポイントとなる。当社は、1970年に屋根用アクリルゴム系塗膜防水材「アロンコート®SA」を業界に先駆けて上市し、「アクリルゴム」という用語を定着させた。更に、1973年には、外壁化粧防水「アロンウオール®」を上市し、日本に初めて「外壁防水」の概念を確立し、防水と構造躯体の保護による建物の保護に貢献してきた。アロンウオール®は、高度成長期(1954~1973年)に建設された建物の漏水や早期劣化などの追い風や防水信頼性により日本の原子力発電所の70%に採用されるなど市場を拡大し続けてきたが、タイルや石材などの乾式仕上げや耐久性の低い他社安価品の台頭により、苦戦を強いられている。このような背景に対し、建物の長寿命化を目的とした改修市場において、外壁防水市場の拡大を目指し、建物の寿命を3倍にするための外壁防水を工程削減により差別化・汎用化した改修用・アクリルゴム・外壁塗膜防水工法「アロンウオール®NEO」を開発した。

分析技術

セミインレンズ式電界放射走査型電子顕微鏡による微細構造観察

電界放射走査型電子顕微鏡(FE-SEM)は、微粒子、薄膜、積層体など様々な材料の微細構造を直接観察する手段の一つとして活用されている。我々は1999年にFE-SEMを導入1)して以来、光硬化樹脂の表面・断面形状2)、エマルション粒子3)、シリカ微粒子4)など多くの形状観察を行い、材料開発に活用してきた。FE-SEMは汎用のタングステン熱電子銃SEMよりも高分解能で観察できる特徴を持つ。しかし、最近の材料開発では、観察対象がますます微細化、薄膜化してきた為、SEMにはより高度な観察性能が求められるようになった。このため我々は、2010年に超高分解能観察ができるセミインレンズ式FE-SEM装置を導入した。セミインレンズ(別名、シュノーケル)式FE-SEMの長所は、低加速電圧条件で電子線のエネルギーを低くしても高分解能観察できることにある。このような測定条件下では、電子線の侵入が浅くなるため、二次電子および元素組成情報を持つ反射電子、特性X線は専ら最表面でのみ発生するようになる。そして二次電子/反射電子の放出効率が上がるために、チャージアップ現象による画像障害が抑制され、非導電性試料であっても白金やカーボン等の蒸着処理が不要になる。その結果、試料奥行きの情報が重複しない、真の最表面観察を高分解能で行うことが可能になる。一方、FE-SEMに透過電子検出器を装備することにより、走査透過電子顕微鏡(STEM)として利用できるようになり、薄膜化した試料に対して走査透過像を撮影できる。さらにX線マイクロ検出器を併用すれば、局所領域の元素マッピング測定により材料の表面形状のみならず、内部の構造と元素組成情報まで得ることができるようになる5)。本報では、セミインレンズ式FE-SEM装置を用いて最近検討した観察事例について紹介する。

トピックス

ものづくりセンター新設

アロン化成ではプラスチック製品を中心としたカタチある商品を取り扱っております。この事業においては、如何に迅速に消費者ニーズを捉え、商品を提供するかが、その業績に大きな影響を与えるため、情報収集力と開発スピードが極めて重要な要素となります。そういった中、アロン化成では、前述の要素を含めた総合的なものづくり力アップを目指す「ものづくりパワーアッププロジェクト」を結成、議論を重ねた結果、マサチューセッツ工科大学トーマスアレン教授が提唱する30m理論※を採用した「ものづくりセンター」を建設することとなりました。そこで本稿では「ものづくりセンター」について、そのコンセプトの内容を中心に紹介いたします。

研究コラム

タイトル 掲載 所属 執筆者名
研究開発業務における八正道 『TREND』15号 新材料研究所長 鈴木 浩
オオタカのように 『TREND』15号 先端科学研究所長 吉田 徹彦

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