東亞合成研究年報29号

2026年01月01日発行

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研究年報TREND 第29号

巻頭言

対外発表のススメ

論文

ポリアクリル酸/ポリビニルピロリドン複合体による創傷治癒促進

近年、治癒を促進する創傷被覆保護材の需要が高まっている。しかし、従来品には生体組織への接着性がないため、治癒促進効果が不十分であったり、粘着カバー剤による固定化が必要となったりするなどの課題がある。 一方、我々が開発する新規止血材「アロンキュアⓇ」は、生体組織への高い接着性を持つことから、損傷部に密着して優れた止血効果を示すほか、吸収・保持した体液中の増殖因子などを創傷面に向けて徐放し、治癒を促進することが期待される。実際に、マウス皮膚損傷モデルにて検証したところ、本材料による治癒の促進効果が確認された。本材料は、創傷治癒促進効果を有する医療材料として、今後も幅広い用途展開が期待される。

微細藻類を使ったアスタキサンチンの生産性向上

アスタキサンチンはエビやカニなどの甲殻類に含まれる赤色の色素である。β-カロテンの約40倍の抗酸化活性を有し、抗腫瘍作用や皮膚老化防止などの生理活性を持つことから、動物飼料に加え食品や化粧品産業でも利用が拡大している。本研究ではアスタキサンチン生産能を付与した好塩性ラン藻Synechococcus sp. PCC 7002を作成し、メタボローム解析により代謝ボトルネックを特定した。解析に基づき選択した遺伝子を導入することでボトルネックが緩和され、アスタキサンチン生産量が向上した。また、培養条件の最適化を進めることで生産性向上も達成した。これらの結果から、メタボロミクス活用による株改変がアスタキサンチン生産性向上に有効であることが判った。

新技術紹介

異種材料接着の高速化と耐久性向上-ハイブリッド弾性瞬間接着剤-

反応誘起相分離を利用したハイブリッド弾性瞬間接着剤を紹介する。本接着剤は、硬化が速い多量のシアノアクリレート成分と、硬化が遅い少量の変成シリコーン成分から構成され、その硬化物はポリシアノアクリレートからなる硬い島と、変成シリコーンの架橋によって形成される柔軟な連続相を有する。シアノアクリレートが多いため短時間で硬化するが、変成シリコーンが連続相となる海島型の相分離構造を形成することで、硬化物は柔軟性を持つ。その結果、従来の瞬間接着剤では対応が難しかった振動・衝撃・温度変化などの厳しい環境下でも、優れた接着性と高い耐久性を発揮する。これらの特長により、自動車や電子材料分野など幅広い用途での展開が期待される。

新製品紹介

無溶剤UVハードコート

UVハードコートは、省エネルギーかつ生産性に優れることから、プラスチック製の光学部材や電子機器などの表面保護剤として幅広く使用されている。従来は有機溶剤で希釈された製品が主流だったが、近年では乾燥工程に伴うエネルギーコストやCO₂排出量が課題となっており、有機溶剤を含まない製品へのニーズが高まっている。 こうした要望に応えるため、当社では無溶剤タイプのUVハードコート製品を開発した。本製品は約20~40mPa・sと非常に低粘度でありながら、鉛筆硬度や耐擦傷性に優れている。また、用途に応じて空気中でも酸素阻害の影響をほとんど受けない高硬化性グレードや、着色を抑制したグレードなど、多様な特性を持つラインアップを展開している。

新規多臭気ガス吸着剤「ケスモン®NS-60」

近年、消臭加工製品の需要が高まる一方、従来の消臭剤には消臭能力の不足や多様な臭気成分に対応できない課題があった。本研究では、MOF(金属有機構造体)を用いた新規多臭気ガス吸着剤「ケスモンNS-60」を開発した。「ケスモンNS-60」は物理吸着と化学吸着の両機構により、アンモニア、酢酸、加齢臭、VOC、リサイクル樹脂由来の複合臭など幅広い臭気成分に対して高い消臭効果を示す。さらに、優れた耐水性・耐熱性を有し、繊維や樹脂への加工性も容易なことから、各種製品への応用が可能である。本材料の普及により、快適な生活環境の創出とSDGs達成への貢献が期待される。

全個体ナトリウムイオン電池向け酸化物系固体電解質の開発

リチウムイオン電池(LIB)市場が急速に拡大している中、リチウム資源の供給リスク回避のためのナトリウムイオン電池(SIB)の実用化が進んでいる。本稿では、当社で開発した全固体SIB向け酸化物系固体電解質の特性について詳述する。開発品は高いイオン伝導性と広い電位窓を有し、全固体SIBの固体電解質として優れた性能を示した。また、焼結助剤の併用で高いイオン伝導性を維持したまま、焼結温度を低減することに成功した。さらに開発品を電解質層に適用した全固体SIBを作製し、二次電池として動作することを確認した。本開発品は全固体SIB以外に現行の液系SIBの添加剤などとしても有望であると考えており、今後は用途展開を図っていく。

災害用トイレ排水システムの構築

当社は災害時における快適なトイレ空間の確保を目的に、「衛生」「安全」「運用」「施工性」「省スペース」の5つの観点から災害用トイレシステムを開発した。本稿では、当社システムの中でも特に技術的要素の高い「配管洗浄装置」に焦点を当て、その開発経緯および回帰分析を用いた「洗浄容量の最適化プロセス」について述べる。また、当社の災害用トイレシステムは、洗浄装置以外にも上記5つの観点を満たす独自の構成要素を備えており、有事の際にも安心して利用できる環境の実現に至っている。現在、本システムは公共施設および民間施設において広く採用されており、今後も被災者支援に貢献するための開発を継続していく方針である。

分析技術

におい嗅ぎGC/MS分析による製品中の異臭成分分析

臭気分析は、製品の臭気トラブルや、製品開発過程で副次的に発生する臭気の原因究明など、多様なニーズに対応している。 「におい」は、におい成分の検知閾値や濃度依存性、成分間の相互作用など複雑な要因が絡むため、単純な機器分析のみではにおい成分の特定が困難である場合が多い。におい嗅ぎGC(GC-Olfactometry:GC-O)は、人間の嗅覚を検出器として官能評価を行う分析手法である。質量分析計(MS)などの機器分析と併用し、官能評価と定性分析を同時に行うことで、におい成分を特定できる。 本稿では、臭気分析ライブラリの活用事例と、におい嗅ぎGC/MS分析事例を紹介する。

技術文書発表一覧表

技術文書発表一覧表(2024年10月~2025年09月)

編集後記

編集後記

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関連情報