東亞合成研究年報22号

2019年1月1日発行

論文

エチレンカーボネート中で解繊したセルロースナノファイバーのポリウレタンとの複合化効果

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セルロースナノファイバー(CNF)はプラスチック補強材料として注目されている。しかし、水分散液として得られたCNFをプラスチックと複合化するプロセスには技術的な課題が多い。そこで本研究では、高分子原料中で直接CNFを調製し、そこからCNF-プラスチック複合材料とする方法を検討した。

具体的にはエチレンカーボネート(EC)中でCNF調製を行い、CNF/EC分散液からポリウレタンを合成した。このようにして得られたCNF-ポリウレタン複合材料の物性を調べたところ、流動温度の上昇と、それに起因する高温での物性低下抑制が確認できた。

新技術紹介

反応誘起相分離とフィラー偏在技術を応用した高機能材料の創製

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本研究では、反応誘起相分離によって2相に分離したポリマーブレンドの1相だけに無機フィラーを偏在させる技術により、ポリマーと無機物の特長を両立する高機能材料の創生を目指す。

反応誘起相分離では通常の(複数ポリマーの混錬などによる)相分離とは異なり、少量ポリマー成分が連続相となる構造が得られる。この少量成分の連続相にフィラーを局所的に配置(=偏在)できれば、少量のフィラーであっても熱や電気の効率的な伝導経路を作ることができる。本稿ではこの技術を「熱伝導性絶縁樹脂」「導電性樹脂」に応用した開発品を紹介する。

層状無機化合物を用いた新しい徐放技術の開発

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当社では、層状無機化合物(ホスト化合物)の層間に、機能分子(ゲスト分子)に合わせた種々の相互作用基を導入することで、ホスト-ゲスト間の相互作用を制御して所望のゲスト分子を層間に挿入し、用途に応じて自在に放出する技術の開発を目指している。

これまでに、従来技術では挿入・複合化が困難であった分子の挿入に成功し、相互作用基の種類によってその放出速度を変えられることを明らかにした。今回は、モデルゲスト分子を用いた挿入と徐放のモデル実験、および防カビ剤を挿入した複合体を樹脂に練り込んだ場合の耐熱・耐水・徐放試験の結果について紹介する。

新製品紹介

複合ポリマー型地盤改良剤(液状化対策用地盤注入剤)

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地盤や岩盤中に硬化性の流体を注入し固結させ、漏水防止や強度増加を図る工法を注入工法と言い、注入される流体を注入材と呼ぶ。

今回、アクリル酸マグネシウムとポリ塩化アルミニウムを主原料とする注入材が、地盤の液状化対策に求められる力学物性を満たすことを確認できた。加えて、注入材として必要な特性である浸透性、土中での硬化性、長期耐久性、生物安全性などの評価を行った結果、液状化対策用地盤注入材の完成に至った。

さらに、水ガラス系注入材が適さないとされるアルカリ性地盤においても問題なく適用できることがわかった。また、施工試験により実現場での施工性および注入地盤の品質を満足することを確認した。

高熱伝導性粉体塗料アロンパウダー EL-3000シリーズ

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近年、EV(電気自動車)・HV(ハイブリッド車)などに搭載されるモーター・バッテリー・インバーターなどの電装部品の高出力化への取り組みが旺盛である。これらの絶縁処理には、成形樹脂や絶縁紙などが使用されているが、しばしば放熱阻害による熱マネージメントが議論となり、部品の多品種化に伴う設備・加工費などのコストアップも問題視されている。本稿では、そのソリューションとしてエポキシ系粉体塗料アロンパウダー EL-3000シリーズを紹介する。これは、電気特性に優れ、熱伝導率1.2~1.5W/m・Kという業界最高水準の熱伝導性を有するため、電装部品の高出力化・ダウンサイジングに大きく寄与する絶縁材料である。また、基材形状に応じた金型や紙折り加工は必要なく、単一の塗装設備にて多種多様な基材に対応することを可能とする。

新規抗インフルエンザウイルス剤「ノバロンIV1000」

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近年、インフルエンザウイルスやノロウイルスによる健康への影響が社会問題になっており、市場では抗ウイルスに対するニーズが高まっている。そこで、当社では抗菌剤に次ぐアメニティー材料として、抗ウイルス性能に特化した高性能な新規抗インフルエンザウイルス剤「ノバロンIV1000」を開発した。IV1000は平均粒径が約1μmの水に不溶な無機微粒子で、繊維やフィルムへの加工により高い抗ウイルス性能を示す。その活性は1g/m2加工したポリエステル繊維でウイルス数を1/10000以下に低減した。また、ウイルスとの短時間の接触で効果がある即効性を有しており、その作用メカニズムは細胞を用いた実験により感染・増殖阻害であることも検証した。

速硬化性光硬化型樹脂 アロニックス MT-3041・MT-3042

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光硬化型樹脂を硬化させる紫外線照射光源として、省電力など利点の多い紫外線発光ダイオード(UV-LED)が注目されている。一方で実用的なUV-LEDは、従来からある高圧水銀ランプと比較して長波長(365・385nm等)かつ単一波長であり、紫外線照射光源に用いると光硬化型樹脂の硬化性は低下する。そこで当社は、コーティングや塗料など硬化性が求められる用途向けに、空気下における硬化性が飛躍的に高い光硬化型樹脂を開発した。本製品紹介では、この速硬化性を有する光硬化型樹脂アロニックスMT-3041・MT-3042の硬化性および硬化物物性等について紹介する。

エステル交換法による多官能アクリレート

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当社は多官能アクリレート系の光硬化型樹脂を「アロニックス」として製造販売している。最近、独自開発したエステル交換触媒による多官能アクリレートの新製法を確立し、これまで市場に流通していなかった特長ある製品を上市した。

本稿では、新製法により得られる製品の中から、低粘度で硬化後に高硬度を発現するグリセリントリアクリレート(MT-3547)、高い親水性を有する高水酸基価ペンタエリスリトールアクリレート(MT-3548)、経時安定性と耐金属腐食性に優れる高純度ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(MT-3549)を紹介する。

ペットサポート製品の開発-ワンちゃんの健康と飼い主様の笑顔のために-

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多様化する時代の中、ペット犬を飼う環境は向上し、犬の高寿命化とそれに伴った介護の問題が生じている。人と同じく身体機能や認知機能の低下により、食事が摂れなくなったり、痴呆を発症する犬もいる。現在、犬用の介護製品は少なく、人用の介護用品を代用するなど、実用的なものがない。

本稿では、市場調査によりニーズの高かった食事や立位保持のための「姿勢サポートクッション」開発を中心に、ペットを家族として大切に想う方々の支えとなるペットサポート製品を紹介する。

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