東亞合成研究年報21号

2018年1月1日発行

新技術紹介

シルセスキオキサン誘導体の耐熱用途への展開と宇宙機用保護材料の開発

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昨今の電子機器の進歩に伴い、この分野で用いられる材料に対する耐熱性の要求が厳しさを増している。耐熱性付与剤としても用いられている有機無機ハイブリッド材料:シルセスキオキサン誘導体「SQシリーズ」は、これまで用途によって耐熱性が不足することがあった。そこで、SQシリーズの分子設計を見直し、耐熱撥液性、耐熱衝撃、耐黄変などに優れる構造を見出した。これらの知見を活かして、宇宙機用の耐原子状酸素性コーティングへの適用を検討したところ、既存品の欠点を克服した画期的なコーティング剤を開発でき、SQシリーズを塗布した材料が実際に宇宙空間で用いられた。また、宇宙機の熱制御フィルムとして用いられるポリイミドフィルムへの工業的塗工プロセスを確立した。

分析技術

高分子の誘電特性

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高分子は絶縁性が高く、この性質を利用して電線の被覆などに広く用いられている。しかし、高分子材料に交流電場を印加すると電気エネルギーの一部が熱に変換され、発熱という形でのエネルギー損失がおきる。同様のことは高分子を電子通信機器の部材として用いる場合にも起き、情報の伝送損失をもたらす。

これらの問題は、高分子にみられる「誘電緩和」という現象が原因となっている。よって、高分子を電子材料として用いる場合、誘電緩和をはじめとする誘電特性の把握が重要となる。

そこで、本稿では高分子の誘電特性と測定法について解説した。さらに、具体的なデータとして各種ポリアクリレートの測定例を用い、誘電特性とガラス転移温度の関係などを議論した。

新製品紹介

ガラス代替樹脂 アロニックスシート X-157

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近年スマートフォン等の携帯端末や車載ディスプレイに使用されるカバー材および透明電極基板は、ガラスから樹脂への代替が進んでいる。樹脂は、軽量で割れにくく加工しやすい反面、硬さや耐熱性の面では更なる改良要求がある。

そこで当社独自の技術により、「硬く」、「割れにくい」ガラス代替樹脂「アロニックスシートX-157」を開発した。X-157はカバー材としての性能を満たす上、200℃の高温プロセスで透明導電性膜の実装が可能な高い耐熱性を有する。さらに、低位相差などの光学特性にも優れ、様々な用途でガラスの代替が期待される。

今回、X-157の光学特性、力学物性、耐擦傷性、耐衝撃性、耐熱性を紹介する。

低誘電性接着フィルム「アロンマイテイAF-700」シリーズ

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近年、スマートフォン等の電子機器において通信速度の高速化が検討されており、これに伴い、電子機器に搭載するFPC(フレキシブルプリント配線板)には、低誘電率及び低誘電正接化が要求されている。この要求に応えるべく、当社FPC用接着剤「アロンマイテイAFシリーズ」の低誘電特性タイプの開発に着手し、その結果「アロンマイテイAF-700」シリーズの開発に成功した。本製品は、他社低誘電性接着剤と比較して優れた伝送特性を示し、また、FPCを構成する材料であるポリイミドやLCP(液晶ポリマー)フィルム、及び銅箔に対し優れた接着性を示す。今回は、この「アロンマイテイAF-700」シリーズの優れた特徴について紹介する。

タッキファイヤの表面偏析技術を利用した高耐熱性アクリル系粘着剤の開発

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特定のタッキファイヤを粘着剤ベースポリマーに添加することにより、高い割合でタッキファイヤが表面に偏析した粘着剤を開発し、従来のアクリル系粘着剤に比べて、高温下における粘着力や低極性材料に対する粘着力などが大幅に改善した。今回開発した粘着剤は、タッチパネル用粘着剤としての湿熱下における発砲抑制、曲面に対する接着性、真空圧空成形法により成形した加飾フィルムの耐熱試験に対する剥がれ抑制などに対して有効であることがわかった。

耐熱性、耐油性に優れる新規熱可塑性エラストマー(開発品)

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車載用エンジン周辺に使用されるエラストマー材料には、高い耐熱性・耐油性が求められる。そのため、現在はフッ素系、シリコン系、アクリル系の架橋ゴムが使用されているが、加工性が悪く、射出成形出来ないといった課題がある。一方、熱可塑性エラストマー(TPE)は射出成形や押出し成形が可能であり、加工性に優れたエラストマー材料であるが、耐熱性が十分とは言えず、車載用エンジン周辺用途に使用出来るものは少なかった。このような背景のなか、我々はこれまで培ってきたラジカル重合技術をベースとし、新規 TPE を開発するに至った。今回紹介する新規 TPE は耐熱・耐油性に優れ、かつ射出成形可能な加工性を有する新しいエラストマー材料である。

「切替マス」の開発 ~非常時に管路を切替えて排水機能を確保する~

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阪神・淡路大震災以降、災害応急対策活動に必要な施設や地域防災計画において避難所として位置づけられた施設等については、耐震性能に余裕を持たせるとともに、これら拠点での活動を妨げないように、震災後にライフラインおよび排水機能を確保する事が「官庁施設の総合耐震計画基準」に明記された。

このため、通常時に下水本管へ接続されている管路を非常時に汚水槽側へ切替えできる配管部材が必要となり、関係者らと意見交換を繰り返す事で、容易かつ確実に管路を切り替えできる独自構造を確立する事ができた。

今回は、この構造を組み込み、全国で採用されるまで実績を伸ばしてきた「切替マス」を紹介する。

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