東亞合成研究年報19号

2016年1月1日発行

新技術紹介

逆相懸濁重合によるATBS架橋微粒子を用いたDN-ゲルの力学特性

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イオン性ポリマーと中性ポリマーの含水IPN(Inter-penetrating Polymer Network)であるDN(Double Network)ゲルは、静電反発に基づくポリマー鎖の高度の絡み合いとイオン性ポリマーの犠牲的破壊が高強度の起源と言われている。ここではDNゲルの実用的な改良法であるMR(Microgel-reinforced)ゲルに着目し、架橋密度や粒径、濃度などが力学特性に与える影響を調べた。その結果、微粒子の膨潤倍率や添加量、二次モノマーの濃度・連鎖長がゲルの強靭性に大きな影響を及ぼすことが示され、粒径や膨潤性を制御した架橋微粒子を用いることによって高強度のハイドロゲルが得られることを確認した。

銅配線パッケージの信頼性に対するイオン捕捉剤"IXE","IXEPLAS"の効果

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近年、急増している銅ワイヤパッケージは、金ワイヤパッケージに比べて信頼性に劣ると言われているが、その信頼性低下のメカニズムについては不明な点も多い。我々は、銅配線パッケージにおける封止樹脂中の遊離Cl-イオン濃度とpH値が信頼性に及ぼす影響について検証し、遊離Cl-イオンや、低pHが腐食に悪影響があることを確認した。これらの封止樹脂にイオン捕捉剤を添加することによって、遊離Cl-イオンを捕捉することが可能で、信頼性も大幅に向上した。また、添加するイオン捕捉剤が同じ組成の場合、微粒子タイプの方が信頼性試験において、より高い効果を示した。

分析技術

顕微レーザーラマン分光法による多官能アクリレート硬化物の表面硬化状態の解析

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電子線照射により表面改質を行った多官能アクリレート系紫外線硬化樹脂の表面硬化状態を顕微レーザーラマン分光法により解析した。硬化物の断面にレーザー光をポイント照射し、深さ方向に沿って10 μm間隔でラマンスペクトルを測定し、アクリロイル基の反応率デプスプロファイルを得た。反応率は最表面から30~60 μm深部に至るまで連続的なシグモイド形状で変化しており、傾斜した表面硬度物性を発現するよう表面構造が変化したことを明らかにした。電子線照射による多官能アクリレート硬化物の表面改質効果は、加速電圧と照射量で制御することができ、表面硬度の物性改善は反応率と改質深さに依存することがわかった。

新製品紹介

光硬化型粘接着フィルムのタッチパネルへの応用

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硬化型粘接着フィルムは、硬化前は粘着剤のように室温貼合でき、貼合後に光硬化することで永久接着剤として機能する接着剤であり、従来の粘着剤では実現困難だった性能バランスを実現することができる。本接着剤を、タッチパネルのカバーレンズとセンサー部の間に用いられている段差充填樹脂へ応用し、粘着剤では達成困難とされる段差追従性と耐発泡性の両立を目指した。検討の結果、段差追従性は光硬化前の粘弾性挙動の最適化が、耐発泡性は光硬化後の剥離強度と貯蔵弾性率の高バランス化が性能向上に大きく寄与することが判明した。これらの知見を元に、段差追従性と耐発泡性を両立した「アロニックスUVP-1254」を開発したので紹介する。

ゴム用新規瞬間接着剤 アロンアルフア "#221RF"

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ボンドアロンアルフアは瞬間接着剤の代名詞として日本国内ではトップシェアを誇り、多くの方々にご愛用頂いている。その用途は多岐に亘るが、今日では一般消費者用途に次いで自動車用途が多い。しかしながら、瞬間接着剤は自動車用途では仮止め、あるいはウェザーストリップ(ドア周りゴム部品)に代表されるゴムの補修接着に多用されている。本製品紹介では、このウェザーストリップ等ゴムの接着に特化した新たな速硬化グレード「アロンアルフア#221RF」について、EPDM、TPOに対する接着能を中心に紹介する。

排泄支援ロボット-進化する介護用品

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ポータブルトイレはトイレまでの移動距離を短縮することで、転倒等の事故を予防することができる排泄介護用品である。しかし、介助者からの要望として労力を軽減したい、排泄物のにおいが室内に広がらないようにしたいとの要望があり、ポータブルトイレをベースとし、ロボット技術を用いた水洗ポータブルトイレの開発に取り組み、真空圧力を利用し500ccの洗浄水で排水することを可能とした。水洗ポータブルトイレは介助者が汚物処理をしなくても良く、室内でのにおいもなく、利用者は介助者に気兼ねなく生活することが可能となり、誰もが排泄だけは最後まで自分の力で行いたいと願っていることを実現できるシステムである。

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