東亞合成研究年報14号

2011年1月1日発行

トピックス

R&D総合センター新設

東亞合成グループが永続的な発展を続けていくには、「研究」を起点としたスパイラルアップの事業展開が必須です。研究開発の目指す方向は「新規機能および新規製品の継続的創出」であり、すなわち「高付加価値製品の創出」です。その実現のためには、従来の施設、設備や仕組みの改革が必須であるとの経営トップの想いを受け、研究再構築を図ってきました。本館を含め、船見町から8号地に分散していた研究施設の名古屋西工場内への集約が順調に進み、ハード面での研究再構築の完成が間近となりました。新設の研究施設はR&D総合センター、第1中試棟および危険物倉庫であり、移設の研究施設は、研究多目的プラント(KMP)と研究連続重合設備(KUFO)です。

この研究施設の中心となるR&D総合センターは、株式会社安井建築設計事務所が設計を担当し、2009年の11月から株式会社フジタにより新築工事がスタートしました。2010年9月に無事竣工し、研究機器の新設・移設作業も終了しました。このR&D総合センター(写真1)の概要および今までの研究所との違いについて紹介したいと思います。

論文

末端に疎水性部位を導入した分散剤の物性評価

分散剤の構造と性質の相関を調べるために、分子量の異なるポリアクリル酸ナトリウム末端に疎水性であるジプロピレンオキサイド(DPO)を導入した分散剤をいくつか合成し、それらを用いて調製した炭酸カルシウムスラリーのスラリー粘度・分散剤吸着量・ζ電位を比較した。

その結果、ポリアクリル酸ナトリウムの分子量が低い場合には、DPOが導入されていないものは炭酸カルシウム表面に吸着せず、分散剤としての効果を示さなかった。一方、DPOを導入したものは炭酸カルシウムに吸着するようになり、分散剤としての効果があった。

ポリアクリル酸ナトリウムの分子量が大きくなると、ポリアクリル酸ナトリウムのみでも炭酸カルシウム表面に吸着するようになり、DPOの有無にかかわらず分散剤として同程度の効果を発揮するようになった。これらのことより、DPOの導入が分散剤の性質にどの程度影響を与えるかは、ポリアクリル酸ナトリウムの分子量に依存することが判明した。

また、今回の検討から「分散剤の性質をスラリー粘度・吸着量・ζ電位の3つの観点から評価する」というアプローチが有効であることも確認できた。

新製品紹介

シート状光硬化型粘接着剤の開発 UVPシリーズ

近年急速に市場が拡大している液晶ディスプレイ(LCD)を始めとするフラットパネルディスプレイ(FPD)は、様々な部材の組み合わせから成っている。FPD用光学フィルムは、光学機能を付与したフィルムの積層体であることが多く、これらに用いられる粘着剤や接着剤への要求が年々高度化している。

従来、光学フィルム同士の接着には、歩留まりが高く使用が容易という特徴から、「シート状粘着剤(以下、PSAシート)」が多く使用されている。しかしながら、粘着剤は室温での貯蔵弾性率が低くゴム状態であるため、薄膜化した場合の接着力不足、耐熱環境下の変形による位置ズレの発生、裁断時の刃への粘着剤付着等の根本的な問題がある。

一方、接着剤は高温での貯蔵弾性率が粘着剤よりも高いため耐熱性が高く、「液状接着剤」が薄膜化に用いられるが、液のはみ出しによる汚染や気泡の混入等の問題がある。

今回、PSAシートのように光学フィルム同士の貼合が簡便で、紫外線(以下、UV)を照射する事で架橋・硬化し、貯蔵弾性率、接着力及び耐熱性が向上する「シート状光硬化型粘接着剤(以下、PCAシート)」を新規に開発した。

シルセスキオキサン誘導体「光硬化型SQ シリーズHD(ハードコート)グレード

私たちの身の回りには様々なプラスチック材料を用いた製品であふれている。ガラスからプラスチック材料への置き換えも進んでおり、1970年代に登場したPETボトル、眼鏡レンズ、自動車のヘッドライトカバーなどは大きな市場を形成している。

近年では、さらにガラス代替材料の用途が広がってきており、フラットパネルディスプレイはそのよい例である。全面及び背面ガラスをガラスから樹脂にすることにより、軽量化や機能性の向上などが期待できる。ガラス代替材料の進展は、樹脂の軽さ、加工性などの特長からなるものだが、その一方で硬度、耐候性の面においてはガラスに比べて劣っている。
そのようなガラス代替材料のデメリットを、各種コーティングにより補い、実用化している例が多くみられる。

ノンハロゲン難燃型ソルダーレジストフィルム「SRF SS-9000シリーズ」

プリント配線板では各種部品がはんだ(solder)付けにより実装されるが、その際はんだ付けをする場所以外を絶縁膜で覆い回路を保護する必要がある。この絶縁膜がソルダーレジスト(solder resist)である。このソルダーレジストをフィルム状に加工したものがソルダーレジストフィルム(SRF)である。

近年、環境問題に対する意識の向上から、電子機器等に用いられる材料のノンハロゲン化が進められており、ソルダーレジストについてもノンハロゲン化が求められている。従来、ソルダーレジストでは電子機器材料に要求される難燃性を付与する為に、主に臭素系難燃成分が使用されてきた。

そこでノンハロゲン化の要請に応えるために、ハロゲン成分を使用せず、難燃性能を備えたソルダーレジストフィルムの開発を行い、特に難燃性に対する要求が厳しいフレキシブルプリント配線板(FPC)分野向けのソルダーレジストフィルム「SS-9000シリーズ」を開発したので紹介する。

超耐熱性瞬間接着剤 アロンアルフア® #911T5

アロンアルフアは、瞬間接着剤の代名詞とも言える当社が誇る商品であり、1963年に工業用、1965年に医療用、そして1971年に家庭用として上市し多くの場面で使用されてきた。
その特長は何と言っても「瞬間接着性」であり、金属や汎用プラスチックであればまさに数秒で強力に接着することができる。

一方、アロンアルフアには弱点もあり、その一つとして挙げられるのが「耐熱性」である。家庭用としては耐熱性が要求される場面は少ないが、工業用としては自動車関連をはじめとして耐熱性が要求されることが多い。

分析技術

ζ電位測定法の原理と応用例

コロイド分散系とは何らかの分散質が分散媒中に分散しているものを指す。分散質-分散媒の組み合わせは多様であり、気体-液体(ホイップクリーム)や液体-液体(乳液)、固体-液体(塗料)などのコロイド分散系が様々な分野で利用されている。しかし、コロイドの分散状態を維持するのは容易なことではない。これはコロイド分散系の熱力学的な最安定構造は凝集した状態であるためである1)。そこで、コロイド粒子をうまく分散させるには、粒子間の斥力を制御して、速度論的に分散状態を安定化するという方法をとることになる。こうしたアプローチをとる場合、粒子間に働く力を評価することが非常に重要になるのは言うまでもない。
コロイド粒子間に働く斥力の起源としては主に以下の2つがある。

  1. 静電的相互作用による斥力
  2. 粒子表面への吸着物による立体反発力
    これらの力の内、静電的相互作用による斥力に関してはDerjaguin、Landau、Verwey、OverbeekがDLVO理論を提出しており2)、電荷を持つコロイド粒子の分散・凝集に関しては、この理論に基づいて議論することができる。DLVO理論において重要な役割を果たすのがζ電位である(ただし、理論中でζ電位そのものには言及されていないことに注意)。
    基盤技術研究所では2010年にζ電位測定装置(日本ルフト社 DT-1200)を導入し、種々の試料に対して応用を試みてきた。本稿ではζ電位測定法の原理や特徴、実際の測定例を紹介していく。

研究コラム

タイトル 掲載 所属 執筆者名
感動のある研究・開発を 『TREND』14号 R&D総合センター長 栗山 晃
My Internship Experience 『TREND』14号 基盤技術研究所(インターン生) Thom Bohdanowicz

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